通説の裏側を穿つ、音楽評論の快作

Music

『吉田拓郎から始めるロックスター列伝』(田家秀樹・スージー鈴木 著)

日本の音楽シーンを現場の第一線で目撃・記録し続けてきた田家秀樹氏と、鋭い分析眼と独自のポップカルチャー論で知られるスージー鈴木氏。世代もアプローチも異なるお二人の音楽評論家がタッグを組み、日本のロック史を彩る13人のアーティストを「通説」という既存のイメージから解き放つスリリングな対談集です

本書の最大の魅力は、長年語り継がれてきた「伝説」や「パブリックイメージ」に対する心地よい裏切りと解体にあります。「え! 拓郎ってフォークじゃないの?」という帯のキャッチコピーが象徴するように、ステレオタイプ化されたジャンル分けや音楽的評価を、軽やかな語り口でアップデートしていく展開は爽快の一言に尽きます

中でも特に強い印象を残し、思わずニヤリとさせられるのが、浜田省吾さんを評した「平和を歌う『普通の人』、浜田省吾」というフレーズです。

「アリーナを埋め尽くすロックオペラ的なカリスマ」や「孤高のストリート・シンガー」といった、どこか神格化されがちな浜田省吾像に対し、あえて「普通の人」という鋭い批評的視点を投げかけています。圧倒的なスケールで社会や平和、生活者の日常を歌い上げながらも、その視線の根底には一人の等身大の生活者(=普通の人)としての誠実なまなざしが流れている――。この本質を突いたアイロニカルかつ愛のある表現には、著者の観察眼の深さを感じずにはいられません。

吉田拓郎さんをはじめとする13人のロックスターたちが、お二人の言葉のセッションによって新たな息吹を与えられていく様子は、まるで良質なラジオのトークセッションを聴いているかのようです

音楽ファンはもちろんのこと、昭和から平成の日本のポピュラー音楽をリアルタイムで通ってきた方にも、新しい発見と肯定感を与えてくれる見事な一冊です

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